ヤフーのような総合ポータルでも同様だ。
いったんアクセス数が減ってしまえば、同社の収益の最大の柱となっている広告収入に多大な影響を及ぼす可能性がある。
そのあたりの不安は、ヤフーにしろ、楽天にしろ、決して無縁ではない。
「いずれはわれわれの業界がグーグルに呑み込まれるかもしれない。
その日を座して待つのか、それとも打って出るのか」という漠然とした悩みは、日本のネット企業経営者の頭の片隅にいつも垂れ込めている暗雲だ。
だからこそ彼らほどのように今後の戦略を立てて生き抜いていくのか、模索を続けている。
楽天が無謀とも言えるTBS買収に手を伸ばしたのは、そうした焦りからだったと推測できる。
一方、アメリカでは、まったく違った業界構図になっている。
グーグルの圧倒的なパワーを見せつけられた他の企業が、グ、グルと真っ向からぶつかる戦略に打って出ているのである。
つまりマイクロソフトにしろ、ヤフーにしろ、グーグルの強力な対抗馬と見られている企業はどこもグーグルの戦略を手をこまねいて傍観しているのではなく、対抗策を果敢に打ち出したのである。
いち早く動いたのは、グーグルを世に出すきっかけを作ったヤフーだった。
小さな若いベンチャーだったグーブルは、二〇〇〇年にヤフーの標準的な検索エンジンとして採用され、これをきっかけに世間に知られるようになった。
当時ヤフーはすでに巨大ポータル企業として、知らない人はいない存在だったからだ。
だがグーグルが成長してヤフーの存在を脅かすようになり、「庇を貸して母屋を取られる」とも言えるような状況になっていく。
この状態を看過できないと考えたヤフーは、グーグルとの長年の契約を打ち切った。
そしてキーワード広告分野でグーグルと覇権を争っていたオーバーチュアや検索エンジン企業のインクトゥミなどを次々と買収し、自社開発の検索エンジン「ヤフー・サーチエアクノロジー(YST)」を二〇〇四年にリリースしたのである。
そしてこのヤフーとグーグルの対決に大いに刺激されたのが、マイクロソフトだった。
先ほども書いたようにウィンドウズとオフィスという二大ソフトによってパソコンの世界を制覇している同社は、「検索エンジン戦争に乗り遅れると、インターネットの世界を支う自前の検索エンジンの開発に乗り出した。
またキーワード広告についても「アドセンター」という名称で自社開発し、ヤフーやグーグルに真っ向から対抗するサービスを次々と二〇〇四年ごろから、アメリカの検索エンジン業界はこの三強の対決を軸に動いている。
そしてこの三強の戦いは、思わぬ余波を生んだ。
競争が激化するのにともなって、検索エンジンそのものがさらに大きく進化し始めたのだ。
たとえばこれまで検索エンジンの検索対象がインターネットのホームページだけだったのに対し、グーグルやヤフー、MSNが先を争って新たなサービスを開発・提供するようになったことから、自分のパソコンのほどディスクの中の文書などを検索してくれる「デスクトップ検索」や、ネット上で観られる画像や動画を検索できる「イメージ検索」、さらにはニュース検索や地図検索、案内広告などへとどんどん拡大していくことになったのだ。
そしてこれに呼応するかのように、三強以外からも検索エンジン戦争に挑戦しようとする企業が続々と現れてきた。
たとえばオンライン書店のアマゾンは、「A9」という子会社を新たに設立し、グーグルなどに先駆けて書籍の全文検索という驚くべき検索サービスを投入して、業界の度肝を抜いた。
さらに通常の検索エンジンも開発し、グーグルやヤフーと対抗できるパワーを見せつけている。
そのような状況を見れば、将来的にはヤフーやマイクロソフト、アマゾンが打ち勝つ可起きるのか分からないシリコンバレーである。
グーグルがIPO(株式公開)するしばらく前に、「マイクロソフトがグーグルを買収する」という噂が流れて騒然となったこともあった。
さすがにグーグルは現在、巨額の株式時価総額となっているから、買収するのはきわめて困難だが、可能性はゼロではない。
しかし現状では、やはりグーグルの技術力が圧倒しているといえる。
この本を「グーグル」という一企業の社名を前面に出して書いたのも、やはりグーグルの持つ技術力や求心力が圧倒的であるという理由によるものだ。
話を戻そう。
では日本では、こうした競争の構図は生じていないのだろうか。
業界を見渡してみると、そうした胎動は少しずつ生まれはじめている。
ライブドアや楽ろから日本でもインターネット業界に新しい波が出現してきた。
ブログや掲示板などがネットで流行しているのをうまくすくい取り、それらをビジネスにする会社が現れてきたのである。
日本では「ミクシィ」「はてな」「グリー」といった若いベンチャー企業がそうだ。
供している会社で、要するに気軽なご近所づきあいのような共同体を、会員制でインターネット上に構築したものだ。
ミクシィユーザーは自分の簡易ホームページをミクシィ内に作ることができ、プロフィールを公開し、日記を書くこともできる。
無数の掲示板もあり、同じ趣味や仕事、志向などを持つ会員同士が集まって情報交換も行える。
いわば巨大な「仲間うち」のサークル活そしてその「仲間うち」意識を、ユーザーの紹介がなければ入会できないという閉鎖的な会員制度が支えている。
新人ユーザーはだれかの友人としてSNSに参加し、そこから徐々に友人の輪を広げていくことができる。
う機能や、「おたがい知人になりましょう」という定型メールを送ることができる機能など、親しい友人ではないけれども、他人ではなく知人であるというゆるやかな人間関係を、うまくネット上に再現している。
この巧みさが人気を集め、多くの熱心な利用者を生み出している。
三日以内に一度以上は利用するユーザーが七割で、ユーザー一人が一日に閲覧するページ数は約五十にもなるという。
そしてアクセス数の合計は一日四千二百万にも達し、ポータルサイトなみの規模になってきている。
オンラインショッピングモール大手の楽天の社員だった田中良和氏が作ったSNS「グリー」も、同様のサービスを提供している。
田中氏は以前、筆者の取材にこう話していた。
「インターネットの世界だけではなく、中央集権から分散へというのは今の世界の基本的なテーマになりつつあると思う。
通信テクノロジーが進化したことで、これまで中央集権できている。
今の時代はその傾向がさらに加速していっており、グリーはそんな様な分散型のモデルの基盤を提供していきたいと思っている」こうしたSNSやブログのようなビジネスは、コミュニティビジネスやC2C(消費者間取引)ビジネス、あるいはCGM(消費者がコンテンツを生み出すメディア)などとも呼ばれている。
これまでのB2Cのポータルビジネスが、企業が一方的にどんどんサービスや製品を提供し、消費者はあくまで受け手としてそうしたサービスを享受していたのに対し、なる。
企業側がしなければならないのは、その消費者同士のやりとりが気持ちよく、スムーズに行えるようにきちんとしたしくみを提供することだけだ。
このC2Cビジネスは今後爆発的に拡大し、将来的に市場規模はB2Cと匹敵するほどになるのではないかと言われている。
こうしたコミュニティ中心のビジネスが急激に伸びてきた背景には、グーグルが形成しようとしているフラットな社会の出現があると思われる。
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